実は同業者様からも問い合わせの多い先進安全技術の主要機器パーツ交換に関する話題。

巷では都市伝説のごとく「アイサイトのカメラ交換は高いので注意!」といったことを聞くこともあると思いますが実際はどうなの?といった部分にクローズアップいたします。

今回も同業者様より持ち込まれた案件で

EyeSight使用停止マークが表示 / TCS・レーンキープ警告が点灯しっぱなし

 

とのこと。早速スバル専用診断機SSM4に接続し状態を確認してみます。

すると見慣れない故障コードが複数出力されていましたがそのなかでも「キャンセルコード」というもののなかにアイサイトの作動をキャンセルするコードを発見。

コアデータの為、詳細を公表はできないのですが

何らかの原因がありアイサイトの作動を強制的に停止(キャンセル)させている状態

 

であることが読み取れました。これを解析するために入力される系統のすべてを数値から探っていきます。「協調制御」といって様々なシステムとの兼ね合いがある中からまっすぐ走っているにもかかわらず数値が大幅に外れている項目をピックアップ。

実際のハンドルにズレがないのを確認し走行学習を実施しますがやはり中立点に大きなズレ(真っすぐでない判定)が・・・。

こうなると疑うはカメラ本体しかありません。しかも気になる後付け装備が目に入ります。

デジタルインナーミラーです。ここから太い配線が3本カメラ側に取り廻してありますので嫌な予感がよぎりました。

余談ですがアイサイト車にカメラ本体に近接して設置する用品(ドラレコや当該ミラー等)を取り付ける場合にはカメラ視界に影響しないように取り付ける場所を確認する必要があります。

厳密な規定に驚かれる方も多いですがこれは機能を発揮するための絶対条件なので知っておいて損はありません。

今回の車両は右側の突出カメラ部(ベース)もこれに抵触しますが、そもそもが「真っすぐでない」と判断されることに疑いをかけるとすればカメラが真っすぐを向いていないことを意味します。早速カメラ本体カバーを外しますが目視では本体に曲がりや異常は見られません。しかし配線を不自然に通した形跡が気になります。

上記から業者様経由でお客様にヒアリングしたところ、ご自身でデジタルミラー本体を取り付けた際にカメラカバーを外さず無理に引っ張って通したことが判明。

この際にカメラ本体に力が加わったことで筐体に変形が発生した可能性を突き止めました。↓カメラの左右で下の隙間が違うのがお分かりいただけますか?

 

ここであらためてカメラ本体を交換する、という判断となります。

正直見た目では全く異常は見られませんがおそらく小さな変形なのでは、と推測します。ただしその程度でも異常と認識してしまうのには理由があります。スバルのアイサイトに乗ったことのある方ならお判りでしょうが、カメラの反応するレスポンスや認識機能の正確さは小さなズレも許さない高精度のシステム、ということになります。

ここでまた余談ですがカメラ本体を触ることがNGなのはご存じの方のほうが多いと思います。(納車時には弊社でも必ず説明する約束となっています)

レンズ面に指紋に付着している皮脂等があるだけで今回同様のエラーを発生させてしまします。そのメカニズムは複雑なので割愛しますが拭き取ったとしてもエラーは残り続けます。そのくらい精度に対してはシビアである、と認識したほうが良いかもしれません。

異常から今回の症例では残念ながらカメラ交換が必要となってしまいました。修理代もカメラ本体だけで約20万円、これに診断費とエーミング費用も必要となりますのでおおよそお察しいただける額になると思われます。

私どももこういった高額修理は基本的には望みませんが、システムに対する知識不足や認識の薄さから人為的な故障となりうることも充分考えられます。

また私たち事業者にも特定整備制度と呼ばれる新たな認証制度が制定されましたが、ペーパー上の認可取得でここまでの解析ができない工場が増えることも想定されます。

後付け製品を否定するつもりではありませんが、こういったものの取り付けや修理はやはり信頼のできる販売店を選ぶべきであると思ってやみません。

 

㈲笹本自動車整備工場

 

※当該症例事例による詳細(料金等)はこれ以上の公開をしておりませんのでお問い合わせはお控えくださいませ。