近年おクルマが高性能する中で意外と減らないのがカーエアコンに関するトラブル。
臭いや風量のトラブルは以前の記事にもありますが厄介なのが「冷え」に関するもの。
「暑いときに冷えが弱い」、「天気で冷え方に差がある」など実際のシチュエーションにならないと分からないこともあります。
これら原因は新車製造時におけるエアコンガス注入の管理方法。エアコンガスの注入管理には圧力管理方式と質量管理方式があります。
このうちオーソドックスに用いられている手法は前者の圧力管理方式。圧力ゲージを用いて最適圧にまで上げる方法で最も簡易なのですが、これにはデメリットがあり注入する温度によって大きく差が出来てしまうのです。
考えてみてください。真夏の製造車両と冬の製造車両では圧力も全く異なってしまうのです。今のシーズンですと午前・午後でも大きく気温は変わりますよね。
その結果、同じ新車でもエアコンの効きに実は大きな差が出来てしまうのです。
実際、弊社管理車両の中でも新車の初期点検時に「エアコンが効きが悪い」という訴えを寄せられるメーカーのものもあり、不足量はサービス缶と呼ばれる200ml缶で丸々1個分の不足をクレームにて指摘した例もあります。
これに対してより正確な測定・注入方法として近年質量管理方式の機器を導入するメーカーも増えていると聞きますが、やはり製造ラインでは手際や時間が重視のため規定量の最下限(別途後述します)までしか注入されないのが事実。
そこで弊社でもエアコントラブルを極力減らし、質量管理方式で管理すべく最新鋭機を導入いたしました。
で、実際のところどうなのよ?
という疑問に実証実験を行いましたので是非ご覧ください。
【弊社代車・平成29年式シフォン 中古仕入車両・走行12,000kmの場合】
現状エアコンはよく効きます。メンテナンスの必要性は感じませんが加速などちょっと車が重い…車重のせいかな? まだ新しいのですがどうなのでしょう。
左の赤い機器がエアコンのサービスステーションと呼ばれる質量管理機器です。施工1クールに約20~30分ほどかかります。機器メーターには立会いのもと実際数値を確認していただける判りやすいインフォメーションボードがあります。
作業内容は
①車両内のガスを回収(質量測定)
②真空引きーリーク(漏れ)チェック
③エアコンガス再生クリーニング
④規定量充填
以上の4行程で行います。最近GSなどでもエアコンガスクリーニングとありますが全くの別物で、回収しながら高性能濾過器を用いて純度99.7%まで高純度再生を行います。この作業は冷えの精度にも大きくかかわりますので重要です。
質量管理、というからには重要なのが規定量。どのクルマにもボンネットの裏に記載ラベルがあります。
ピンクのマーキングがそれ。冷媒充填量:300±30gとあります。先程の説明より製造時は270g程度しか入れないらしいです。
今回は300gを規定量にセットし最終工程の注入までを終えました。結果は以下のレシートとして打ち出されます。
ちょっとビックリだったのですが上から充填量は設定したラベルの数値、回収量は車両から回収した数値(!)、追加量が不足分を補うために補充された数値となります。
回収値85gということは既定量の1/3しか入っていなかったことになります。これには驚きました。でも実際冷えているということは間違いありません。
ですが簡単に構造を説明すると家庭用の室外機にあたるカーエアコンのコンプレッサーと呼ばれるものは内容量の可変式というシステムとなっており、簡単に言うとイメージ的には「冷やす仕事をする部屋が複数ある」ものとなります。
これらが規定量のガス量のもとではある程度の冷えに達すると「仕事量を抑える=省エネ運転に切り替える」ために小さな部屋だけで仕事をさせるようになります。
エアコンガスが少ないと全体を動かすだけの圧力に達しないので小さな部屋だけが休むことなくずーっと頑張り続けることになります。このクルマはまさにこの状態だったのです。
エアコン使っていると力もないし、実際燃費も10㎞/Lよりも上に行くことが無かったのであきらめていましたが、施工後はなんと13km/Lまでに改善。
冷えもさらに良く感じることになり、まさに一石二鳥となりました。
これは極端な例となりますが、正常な状態に戻すだけで全体が良くなることにもなりますからこれから必須のメンテナンスだと思います。オートエアコンならなおさらですね!
また、HYBRID車両なら効果は絶大!これらは電動式のコンプレッサーのためガス量に起因する要素はさらにシビアですから燃費数値に明らかな差が出ます。2回目の車検を迎えるハイブリッド車は特に効果として現れますので是非お試しください。
気になる施行料金は消費税別で
軽自動車8,200円
普通乗用車9,200円
デュアルエアコン車10,200円
となっていますので是非ともお気軽にお試しください。
㈲笹本自動車整備工場